北川啓介教授が能登半島地震の被災地へ屋内用インスタントハウスを届けました|国立大学法人名古屋工業大学 (nitech.ac.jp)。ちょうど2人ぐらいが布団を敷けるぐらいの広さがあるようである。価格は1万円。15分ほどで組み立てられるという。避難所にとってこれはなかなかいい発明である。
避難所は,体育館のような広いスペースに所狭しと避難者が雑魚寝状態になる。冷たい板の床の上に布団を敷くところからスタートする。最初はプライバシーなどまったくない状態からスタートする。隣の家族との間に荷物を置き,わずかな壁を作る。寝ているときは隣は見えないが,立ち上がれば丸見えになる。
次の段階が,ダンボール製のパーティションである。また同時にダンボールベッドが持ち込まれることもある。床から数十cm離れるだけで冷たさから少し開放される。しかし,天井がないので冷気が上から降りてくる。周りの音も入ってくる。周りからの目は避けられても,落ち着くことはできない。
ところが今回のダンボールハウスは屋根がある。しかも,オモチャの家のような三角屋根である。冷気も降りてこないし,外の音の侵入も防げる。扉も付いており,プライバシーも守られる。
ダンボールの家と言えば,ホームレスの家を思い出す。いくら避難所と言っても何となく惨めな気持ちになる。しかし,このダンボールハウスは楽しい気分にさせてくれる。それだけでも避難生活に潤いができ,生き延びる希望が出てくると思うのである。
同じ北川教授が開発した屋外用の簡易ハウスも,設置が始まった。こちらはモンゴルのテントハウス「ゲル」をイメージさせる。施工時間は2時間。壁は断熱材で覆われ,冬も夏も快適だという。今回の能登半島地震では,各避難所近くで集会場のような使い方をするという。ただし,価格は1棟100万円ほどする。
家の中に自分の秘密の空間を作りたいと思うことがある。トイレぐらいの広さでいい。扉があり,外の音が少し遮断されるような空間である。ダンボール製のワークスペースや,木製のワークスペースも販売されているが,これはデスクワーク用である。横になるスペースもほしいとなると,今回のダンボールハウスぐらいがいい感じである。
ただ避難所では,体調を急に崩して手遅れになる場合もある。いわゆる災害関連死である。避難所の運営者は,避難者の状況を把握することも仕事である。プライバシーを優先させるあまり,発見が遅くなる危険性も否定できない。そこは巡回の決め事をしたり,災害訓練のときのように毎朝入り口に旗を立てるとか,工夫が必要だろう。
能登半島の避難所近辺に,一般的な仮設住宅を建てる準備も始まっている。しかし,建設が終わるまでに2ヶ月もかかるそうだ。これではさらに体調を崩す人が出てもおかしくない。とにかくまず,ホテルや借り上げ住宅などに退避してもらって,復旧を加速させた方がいいと思う。その際,地域をきちんと仕切って保全することで,火事場泥棒などの良からぬ考えを持つ人を寄せ付けさせないようにしなければならない。すべての対策は,もっとスピード感を持って,段階的にキビキビと決めていく必要があると思うのである。