かつて人類は道具を発明し,これを使って狩猟をおこなった。森林で栗やドングリ,イモ類は採集したかもしれないが,今のような火を使って調理するわけではないから主食ではなかったと思われる。つまりかつては生肉を食べる肉食だったと考えられる。
火を使うようになり,肉や魚を焼いて食べるようになり,またイモ類は火で焼いたり煮たりしてデンプン質も取るようになった。その後,米や麦などの穀類を植え育てて主食にする農耕へと移り,穀類を中心とした雑食の定住型文化に移ったのだが,この狩猟から農耕への移り方はやや不自然な印象を受ける。
農耕文化における動物系タンパク質は,日本の場合は魚が中心で,これに野生の動物を若干加えたような食文化になるのだが,その中から人になつきやすいブタ(イノシシ)やウシ,ウマ,ヒツジ,ヤギ,ニワトリなどを家畜として育てる牧畜が始まり,これによって哺乳類系の動物性タンパク質が安定的に取れるようになった。現在,野生の動物を日常的に食する国民はほとんどいない。ジビエとしてシカやイノシシが高級食材として出されることがあるが,ほとんどは飼育された個体である。
現在,日本ではジビエ料理が地方創生の1つの手段として進められているが,その素材は狩猟で捕獲されたシカやイノシシであり,獣害を起こす個体を減らした際にその肉を食材にしようというものである。しかし,ジビエの素材を安定的に供給することはできない。狩猟で散弾銃で仕留められた個体は,体内に鉛弾が入るため,食用には使えない。ワナで捕獲するやり方では,十分な量を確保できないし,野生動物の数をコントロールできない。つまり,ジビエはサステナブルではないのである。
ただ現在の牧畜は,飼料のほとんどを海外から輸入しているため,海外での不作,貿易摩擦などの影響でビジネスとして成り立たなくなりつつある。
一方,漁業の大半はいまだに“狩猟”である。自然任せである。したがって,海洋汚染や地球温暖化の影響を受けて漁獲量が増減しても,手の打ちようがない。安定的に魚を育てる養殖にしても,海を網で囲った中で育てているため,やはり海水汚染や温度変化によって死滅してしまうことも多い。
地球環境が大きく変化している中で,人類に安定したタンパク源,デンプン源を供給するには,閉鎖空間で育成する植物工場や陸上養殖でコントロールする必要があると思うのである。その技術を世界で唯一持っているのが日本であることを,もっとアピールする必要がある。
もともと食する習慣のないクマをジビエにするなど,不要だと考える。野生動物には未知の病気や寄生虫などが潜んでいる可能性があり,安全な素材であるという証明ができないからである。コグマは動物園で引き取るとして,親グマは処分するしかない。変な情けは掛けなくてもいいように思う。