jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

脱毛サロン花盛り--昭和人の常識からの乖離

電車に乗れば、車内広告で目立つのが、脱毛サロンである。男も女も脱毛サロン。筆者は基本ナチュラル派なので,ヒゲを剃る,散髪する以外はそのままである。まあ,昭和男の古い考えであるようだ。

 脱毛サロンの論理としては,「脱毛は世界の常識」として客を呼び込んでいる。ここには微妙な作為があるように思われるので,少し考察してみた。

 海外でも脱毛は常識だと仮定してみる。日本と違って入浴の習慣がなく,暖かい国では汗もかけば,衛生環境も日本の比ではない。衛生面から脱毛することで,雑菌の繁殖を抑え,体臭を抑え,さらに極端にはシラミの害から身を守る,といった理由で,脱毛が常識化している国が多いというのが一つの理由である。身体を洗わずにセックスするのが普通の国では,体表の衛生のために脱毛をするのだという。なるほどである。

 もう一つは,毛の質と色の違いである。特に欧米の薄色の毛は一般的に柔らかい。脱毛もレーザーではなくワックスで十分だという。また,もともと色も薄いので,脱毛しても印象があまり変わらない。

 一般的な日本人は,皮膚の色が明るめである一方,毛色は黒が中心のため,毛のあるなしで印象が極端に変わる。海外の映画俳優が髪があろうとボールドになろうと,それほど違和感を感じないが,日本人の場合は髪の量,色,眉毛の量や形,ヒゲなどによって印象がまったく変わる。

 女性の場合は,仮に毛深いといっても腕や脚の毛はウブ毛の部類であり,薄くて細い。正直いえばあってもなくても印象は変わらないと思うのだが,気にする女子が多いようだ。ノースリーブもファッションの一つなので,腋毛の処理も理解できる。水着を着る際のVラインの処理もこれも理解できる。しかし,最近は「全身脱毛が当たり前」のような広告が目立つ。すでに30%前後の若い女性がデリケートゾーンを含めた全身脱毛をしているのだそうだ。

 芸術作品で言えば,ギリシャ神話の時代から女性は無毛で描かれてきた。昭和時代まで使われていた「ヌード」というジャンルも無毛のヌード写真が撮られていた。昭和の後半に「ヘアヌード」が解禁され,ヘア写真が当たり前になっていった。女性を商品化する意味での問題はあるが,時代はナチュラルを求めているのだと思っていた。

 それがいつの間にか,一般女性も全身脱毛の時代になったのだろうか。ヘアはデリケートゾーンを隠す意味合いもあり,ヘアヌードもその微妙な雰囲気が一つの意味を持っていたと考えられるが,いまや隠す風潮が衰退し,実質を追い求める時代なのだろうか。

 同じように,男性の脱毛についても,男性脱毛サロンが増えている。当初はヒゲ脱毛が中心かと思っていたのだが,こちらも全身脱毛するケースが増えているという。パートナー同士でお互いに脱毛という理由が多いようだ。

 確かに男性の場合は毛深さが不潔感に直結しやすい。袖口や裾から見える毛が相手に与える影響は大きい。特に,男女雇用機会均等などという以上,女性相手に仕事をする機会も増え,身だしなみの一つとして脱毛を選ぶことは時代の流れなのかもしれない。

 問題は,「脱毛」は手段に関わらず,肌に負担をかけていることに注意すべきことである。衛生上の理由で脱毛することも許すとして,レーザーもワックスも,またカミソリも,毛穴や皮膚にダメージを与える。このダメージが原因で,腫れやかゆみなどの皮膚疾患を起こしたり,メラニン色素の沈着による肌の黒化を招いたりするケースもある。美容サロンがいいのか,医療脱毛がいいのか,あるいは自宅で丁寧に実施するのがいいのか,実態はわからない。シャンプーやボディーソープほど種類がなく,自分に合った脱毛剤を入手できるかどうかを試すこともできない。かといって,何十万もお金をかける価値があるのかどうかも疑問である。「永久脱毛」というのも言葉だけで,結局は何度もサロンに通い,何度も施術を繰り返すことを意味しているだけの場合もないとは言えない。

 地球のオゾン層フロンガスなどによって破壊され,太陽からの紫外線量が増えて,皮膚がんが増える,という報告が1990年前後にあった。これに伴って,たしかオーストラリアでは脱毛を禁止する法律が作られたのではなかったかと記憶している。体毛があることで紫外線の直接の被ばく量を下げ,皮膚がんのリスクを減らす効果があるというものだった。今から思えば,大した効果はなかったのかもしれない。ナチュラル派の筆者にとっては,「脱毛しない方がいい」という根拠だったのだが。

 日本人=黒髪という筆者のステレオタイプ的概念が,すでに世の中では廃れている。女性の栗毛色から男性の金髪,高齢者の緑髪や赤髪,紫髪まで,世の中は変わってきている。脱毛もまあ結構だということにしよう。ただ,脱毛サロンの広告に振り回されて高いお金を払って失敗しないよう,十分な研究,検討が必要だろう。あとは,男性の脱毛については,筆者はまだ「う~ん」と考えてしまうのだが,女性に対する威圧感をなくすためには必要なのかもしれない。いずれにしても,無精ヒゲ,寝ぐせ頭は,少なくともダメだろう。(おしゃれなヘアスタイルが寝ぐせに見えてしまう筆者の頭はもう古い。また,目に髪がかかるヘアスタイルは,男も女もガマンできない。それだけは主張させてほしい)。