jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

人心を惑わす言葉のマジック

3回目の緊急事態宣言で,2021/5/11までの予定が5/31まで「延長」されることになった。飲食店の時短,アルコール提供禁止はそのままだが,デパートは休業から時短に「緩和」した。

 飲食店は「延長」という言葉に愕然とされたろう。1回目も2回目も「延長」された。「またか」という思いもあるだろう。17日間の時短とアルコール提供禁止を「ガマン」しようと心づもりをし,従業員のシフトの調整,仕入れの調整,対策などの再点検もされただろう。5/12からの「解除」を目指して次の営業計画を立てておられただろう。その思いが「延長」という言葉によってみごとに砕かれた。

 一方デパートは「緩和」という言葉で少し救われた思いだろう。

 客となる一般人は,飲食店の規制「延長」に失望し,デパートの営業「緩和」にホッとする。「緩和」という言葉で人流は回復してしまうのだろう。

 逆に「延長」と言われて,仕方ないと思う人と,やってられないと思う人に分かれる。協力金の申請の手続きは面倒だし,何度申請しても支給は遅れていて,自治体や政府に対する信頼度は「延長」のたびに下がっていく。これまで指導に従ってきたお店も,「またか」という思いで,「もう従わない」と思っても仕方がない。

 そもそも,「解除」という言葉は人を解放し安心させる。2回目の緊急事態宣言の解除は,感染拡大数の減り方が鈍化している段階での解除だったため,感染が再拡大してしまった。

 逆に「宣言」「措置」は力が弱いように思える。「発出」という訳のわからない言葉も登場した。1回目の緊急事態宣言の際に,このことについてコメントした 政府とテレビによる“新型コロナウイルス大本営発表”の違和感 - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2020/4/17。さらに「解除」についてもコメントした 「解除」から「切り替え」へ - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2020/6/18。政府もマスコミも,もっと言葉の使い方には気を使うべきであろう,ということを1年後にまた繰り返しになったのは残念である。

 結局は,日本の首相や知事が,海外の大統領や首相に比べて実行できる権限を持たないことがこの言葉の弱さになって現れている。「戒厳令」「非常事態宣言」「発令」などの言葉が日本の政治にはなく,野党も含めた会議での議論が必要なことが,タイミングが遅れる原因だろう。やはり,「有事」という意識と,有事に対応した決定のプロセスが欠けていると言わざるを得ない。まさに平和ボケと言われるゆえんである。

 宣言にしても解除宣言にしても,タイミングが難しい判断だと思う。これを肯定したり否定したりする評論家や政治家,コメンテーターも,無責任な言葉を使うことが多い。筆者も言葉を使う仕事を40年続けているので,改めて気をつけたいと思った。