腰砕けのマスコミと評論家--噂が噂を呼ぶSNSの恐ろしさは“民意”とは違うことを再分析せよ - jeyseni's diary (2024/11/18)と書いて,「筆者の考える民意」と,世の中の次の世代の“民意”がどうやら異なるようだと,改めて思い直したので,まとめてみることにする。
いつの時代も,旧世代の常識に対して新しい常識を掲げて立ち上がるのは若い世代である。古代中国の文化に触れて国造りをした太古の日本,西洋諸国の先進文化に触れて開国に成功した江戸時代後期,産業革命以降も海外に追いつき追い越せと知恵を絞った高度成長期と,常に前向きに,より便利に,より豊かに,そしてその輪が地球全体に広がって,貧困や飢餓のない平和な世界になることを目指して,日本は世界をリードする国になった・・・はずだった。
その日本の世界に対する発信力は,いまやゼロに等しい。世界に発信できる工業製品も,食糧もない。環境改善技術もない。研究人材もない。
インターネットというネットワークが,当初はこれまで多大な時間と労力が掛かっていた情報収集を短時間に公平に行える素晴らしいツールだった。しかし,いつの間にか,「常識」というフィルタリングが働かないあらゆる情報のルツボになり,その情報にすべての人がアクセスできる仕組みへと変貌してしまった。
これまでも,書籍,新聞,テレビ,ビデオテープなどのメディアで,さまざまな情報が発信されてきた。典型的なのはアダルト情報であり,商品情報である。ターゲットに向けて情報を発信するメディアが作られたが,その情報提供ルートには年齢制限やショップの自粛,地域の制限などさまざまなフィルタリングが行われてきた。深夜放送枠といった時間帯による制限もできた。
ケーブルテレビによる多チャンネル化で,アダルトチャンネルやテレビショッピングチャンネルが1日中放送されるようになったが,契約で制限をかけることはできた。
アダルト系の規制の崩壊は,コンビニエンスストアでのアダルト雑誌の販売解禁が大きかったと思う。同時期にヘアヌードも解禁となり,アダルト情報に歯止めが効かなくなった。しかし,それすらインターネット上の無制限のアダルト情報の提供によって,駆逐されてしまった。
インターネットは,フィルタリングのない情報発信の場になってしまっている。筆者の知る「パソコン通信」の時代は,「会議室」と呼ばれる単位でリーダーがおり,情報のコントロールをしていた。その崩壊のきっかけは,「2ちゃんねる」と呼ばれる匿名の投稿サイトの開設である。かつての会議室では,たとえばパソコンの操作に困った人に対して救いの手を差し伸べる,一緒に考える,といった雰囲気があったが,2ちゃんねるでは誹謗中傷が飛び交っていた。今のSNSのコメントの応酬の先駆けだったろう。
現在のインターネットは,筆者も含めて個人単位での情報発信ができる場になっている。小学生でもYoutubeに発信できる。個人が無防備で足を踏み込めるので,個人情報の流出も当たり前のように起こる。犯罪者という個人もネットワーク上にいるからである。
これまでの「正しい民意」は,ある意味で知識の蓄積と適切なフィルタリングによって形成されてきた。その大きな役割を担ってきたのが,出版社,新聞社,放送各社などのメディア,マスコミであった。言葉や情報に対する教育や訓練を受け,それでも問題のある情報が発信されないよう,何重にもフィルタリングを掛ける。これが筆者が考える「正しい民意」を形成するための1つの基準になってきたと考えている。
しかし,そのフィルタリングもなく,基準も形成されないSNSという新たなネットワークツールにより,「新しい民意」が形成される環境ができてしまった。
SNS時代に気をつけたい「エコーチェンバー」「フィルターバブル」とは (NTTコミュニケーションズ)のタイトルにあるフィルターバブルが,今回の選挙結果をもたらしたと解説する社会学者も登場している。しかしそれもまたテレビの上でのコメントである。ネット民は見ない。
著作権,差別用語,コンプライアンスなどの教育も知識もない一般人が発するコメントが充満するSNSの世界では,正しい情報とフェイクの情報の区別がつかない。メディアであっても,単なるタレント上がりのMCやタレントコメンテーターに,しかも思い付きで話をさせるワイドショーこそ,せっかくのメディアのフィルタリングを破壊してきた元凶なので,ここが非難されても仕方がない。
テレビが視聴されていないことは,広告の激減をみればすでに明らかである。広告収入や,視聴料という強制収入でしか,成り立たなくなってきているテレビは,もはや存在価値がなくなったと言ってもいいだろう。フローの情報はインターネットに流れ,ストック情報すらデータベースに収まる時代である。
SNSが新しい“民意”を形成するので,日本からの発信情報がアニメになり,音楽やゲームになり,そして裏動画サイトのドラマになる。それでは食べていけないのではないかと何度も書いているが,止まるところをしらない。これが“新しい民意”だとすると,その民意によって選ばれた政治家は単なる人気投票であり,どんな政治が行われるのか,予想がつかないのはトランプ氏と同様である。しかし,パワハラによる事件は動かしがたい事実である。トップに立っていいものかどうか,そこは“旧民意”である百条委員会や裁判所の判断も必要だろう。
個人の考えで一般人が巻き込まれるべきなのだろうか。部下となる人たちはどういう行動に出るべきなのだろうか。勇気をもって「公務員を辞める」という選択もすべきなのではないのか。
一方で,テレビ局は広告によらない自分たちの企画のコンテンツを作る方向に舵を切って新しいメディアを目指すべき段階だろう。エンタメ系すらすでにテレビ離れしているのだから,アニメ,音楽,ゲーム,ドラマのいずれも,もう提供する価値はないだろう。そこで視聴者を引き付けられる企画ができるかどうかが,テレビ局,特に民放には求められるし,当然のことながらNHKも同様である。