米トランプ政権の高官が秘匿性の高いSNSとして知られる民間SNSの「Signal」を使って,イエメン空爆についての状況をチャットしていたことが暴露された。機密情報かどうか,また誤って招待参加したメディア編集長が全文公開したことについての政府側の主張などで,炎上している。
基本的に,政府関係者が「民間」アプリを入れることがそもそもレベルが低いと言えるし,お互いに誰も「こういうやり取りはマズイ」という指摘もしなかった。機密情報であることも疑う余地はないが,チャットなので一部に限られているから機密情報ではない,という言い訳も子供じみている。
Signalは,日本では闇バイトの具体的なやり取りに使われていることで有名になった。バイトとして雇われた実行役への具体的な指示が指示役から送られてくる。そのやり取りは一切外部には知られないらしい。
筆者としては,こういうプラットフォームを提供している企業は,ただちに稼働を止めるべきだと思う。犯罪に使われるつもりで作ったわけではないとか,逆に政府の機密情報がやり取りされても秘密が保持できる素晴らしい技術であるとか,いくらでも理屈は述べられるだろう。便利に,建設的に使っている人もいるだろう。
しかし,日本では「Signal=闇バイト」とレッテルが貼られていると思う。そんなプラットフォームを運営していて恥ずかしくないのだろうか。企業経営者としてのコンプライアンス欠如ではないのか。おそらく,ある意味でうまく利用された,と言えるかもしれないが,「システムを止めます」と発表すべきではないだろうか。SignalはSignal Foundationという非営利団体が運営しているようで,法律の専門家も関わっている。2014年に有限会社が発表し,2018年から同ファウンデーションが運営している。非営利ならすぐにでもシステムを止めるべきだろう。
ほかにも怪しげなシステムは数多い。場合によってはYoutubeもInstagramも怪しい使われ方をしている。TikTokは中国製ということでアメリカでの運営に釘を刺された。
匿名で情報発信できると言えば,パソコン通信時代の「2ちゃんねる」も今でいう炎上を繰り返していた。逆の意味での幼稚なやり取りだった。その運営者は今や有名なコメンテーターとして活躍している。筆者も数回立ち寄って,その内容の下劣さにあきれて二度と入ることはなかった。運営側はそういうやり取りをどういう気持ちで見ていたのだろうか。恥ずかしくなかったのだろうか。
GAFA(google,apple facebook→meta,amazon)など,いつのまにかアメリカの民間企業がインターネットを支配してしまった。これにmicrosoftが巻き返しを図ってGAFAMと呼ばれるようになったようだ。しかしそこにChatGPTをリリースしたOpenAIなど,生成AIを武器とする民間企業が乱入してきた。中国企業も次々に参入している。
民間企業が入り乱れるインターネットは,自由競争社会であり,つまりは無法社会である。何をやっても自由である。いまのところ,誰も規制を掛けられない。リアルな世界の法律が効かないからでもあるし,リアルな世界では相変わらずのにらみ合いばかり続いていて,インターネットにまで手が回らない。
インターネット大手の良心による自主規制やシステム停止,さらに良心のあるAIの開発によるカウンターパンチを加えないと,もはや歯止めが効かなくなる。
ある意味で,中立的な日本こそが,この現状を打破できる立場にある。世界中のネットワークを見張る良識AIを構築して,運用すべきだろう。ここには日本のAI研究者に期待したいところである。