2021/6/20に来日したウガンダのオリンピック選手団9人のうち1人が,空港での新型コロナウイルスPCR検査で陽性と判明したというニュースについて,3つコメントしたい。
①ワクチン接種が感染に対して100%効果があるわけではないことが改めて証明された(もともと,感染リスクを下げる効果のほか,感染時の重症化リスクを下げる効果が,ワクチンの意味だから,当たり前のことであるが)。
②72時間PCR検査証明によって,非感染を完全に証明できるものではないことが明らかになった(したがって,頻繁にPCR検査ないし抗原検査を継続する必要がある)。
③選手団のほかの人たちは「濃厚接触者ではない」と判断されて入国,国内移動が行われたが,「濃厚接触者ではない」という判断には疑問が残る。
①については,これまでも案内されているからいいとして,②で元大阪府知事の橋下徹氏が橋下徹氏、ウガンダ代表の陽性者判明で「むやみに検査拡大を言っていた人たちは、これを見て反省して」 (msn.com) とコメントしたとネットニュースで見かけた。実際の発言を聞いていないので正確にコメントできないのだが,まずネットニュースのこのタイトルが間違っているように思う。橋下氏は「1回ぐらいのPCR検査では(陽性者を隔離するなんて)(できない)。何回も何回も繰り返すことによってしか対応できない」ということを言いたかったのではないかと思うのである。このタイトルだと,「PCR検査をいつでも誰でもどこでもみんなでやることによって、陽性者を隔離する」ことができないから,PCR検査の拡大はムダだ,と言っているように見えるが,そうではなく,「何回も何回も繰り返すことによってしか対応できない」という部分が真実であることを伝えようとしていると思いたい。
要は,PCR検査は1回やればOKと思っている行政側や国民に対して反省を促しているのであり,「ワクチン接種をしないなら,72時間ごとにPCR検査をすること」を行政も国民も認識しなければならない。海外では当たり前に行われている72時間PCR検査証明について,おそらく日本人でその必要性を認識している人は皆無に近い。(ワクチン接種とプライバシーを考える。日本人には「証明書の常時携帯」は無理。 - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2021/5/5 など,このブログで「72時間」というキーワードで検索していただけると,複数のコメントが出てくる)。
筆者は,第2波の拡大局面の昨年2020年のゴールデンウイークに以下のようにコメントした 2週間の完全封鎖でケリをつける!! - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2020/5/2。当時はワクチンはもちろんなく,PCR検査も「熱が出て保健所に問い合わせた人」だけが受けることができた。したがって,感染してから潜伏期間の1週間を過ぎて症状の出た人を検査して陽性者を隔離すれば,ほかの人は感染していないと判断できて,最小限の検査と最小限の経済損失でウイルス拡散の封じ込めができるとコメントした。今でもこの方法は有効だと思っている。しかし,結局,人の移動を制限せず,検査体制も整わず,休業業種への保証もしなかったことで,そこからの大規模拡大と大規模経済損失,オリンピックの延期などを招いてしまったと思っている。その後の技術進歩により,短時間でのPCR検査,抗原検査が導入され,海外では72時間PCR陰性証明を無料で提供する体制ができているのに,日本は全く手つかずである。橋下氏はもう一歩踏み込んで,「ワクチン接種の拡大も重要だが,ワクチン接種できない人,ワクチン接種を拒否している人には,72時間PCR陰性証明を義務づける必要と体制づくりが必要。その両輪が必要」と言ってほしかった(個人のブログでは発言されているかもしれないが)。
さて,今回いちばん問題にしたいのは③である。ウガンダ選手団の陽性者を除く8人は,「濃厚接触者ではない」と判断されて,入国,国内移動が許可されたというのだが,どこが濃厚接触者でないというのかの定義があいまいだと思うのである。たとえ,ワクチン接種2回,経過10日があったとしても,特に1回目接種から2回目接種までの3週間は感染を受けるリスクもあり,1回目接種以前に感染していた場合は,他人への感染拡大のリスクも持っている。接種した途端に感染罹患も感染拡大もないという誤解があることにより,普通の生活に戻してしまっているのではないか。むしろ,練習を存分にできるようになったと思って,必要以上に濃厚接触状態にあるのではないか。
来日時の航空機の中での状況は報道されていないが,おそらく大はしゃぎをしてきていたのではないかと思う。飲酒もされていたことだろう。そんな環境で何十時間もかけて日本にたどり着いた選手団が,濃厚接触ではないと判断される理由はどこにあるのだろうか。陽性者がいなければ結構だが,陽性者がいたことで,少なくとも選手団9人は濃厚接触者であると判断すべきではないのか。
海外からの帰国者は今,帰国後14日間の自主隔離を義務付けられている。複数の国からの帰国者は,指定宿泊施設での3日間の強制隔離が義務付けられている。ほとんどの帰国者は1人旅であり,機内では静かに映画を楽しんだりして過ごすだろう。濃厚接触な人はあまりいないと考えられる。今回のウガンダ選手団についても,陽性者が出なければそのまま入国でいいと思うが,少なくとも陽性者が出た段階で関係者8人は強制隔離措置を取るべきではなかったのか。何かこの辺りがズルズルとなし崩しになっているのが日本のダメなところなのではないか。ビシッと措置を取るべきなのではないか。オリンピック選手団だからという双方の優遇意識があるのではないか。
これから続々と各国の選手団が来日する。これまでのように事前合宿で早めに来日する選手団が減る分,7月中旬以降に来日が集中することが予想される。わずか9人の選手団でこれだけバタバタしている入管で,3万人の選手団をさばききれるのだろうか。ただ単純なスルーに終わるのではないか。ここは,すでに来日したオーストラリアのソフトボールチームとウガンダの選手団以外は,それぞれの国で同時記録会をして競うZoomオリンピックにした方がいいと改めて思うのである Zoomオリンピックの提案 - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2021/6/19。