「農協の買い取り価格が30キロで6000円ほど」というある農家のコメントを見た。2024年の数字だという。これで計算すると,年間の売り上げは60万円にしかならないというのである。
2025年3月5日時点の全国平均価格は,5kgで3939円。政府は3月10日に備蓄米15トンの入札を行ったが,その後も価格は下がらない。値上がり前の市場価格の1.9倍になっている。要は5kgの従来価格が2000円前後ということである。これで単純計算すると,30kgの市場価格は1万2000円になる。農協の買い取り価格,つまり卸価格の2倍程度が市場価格となっている。とすると,現在の価格が正常だとすると,農家の売り上げは2倍になる。それでも年間120万円。もちろん農家はすでに販売済みの案件なので,今回の価格上昇でも農家の売り上げにはならない。
小麦では,政府買い取り価格が30kgで3000円前後である。これに比べると,米は小麦の4倍の価格で買い取られていることになる。輸入小麦は,1トンあたり63000円。30kgあたり2000円ぐらいになる。
たとえば,食パンを1斤作ろうとすると,必要な小麦粉は300gぐらいである。1食あたり6枚切りで2枚食べるとすると,1食は100gである。一方,ご飯は1食1合で150gである。これを価格に直すと,米だと15円,パンだと7円になる。
ところが加工したパックご飯だと,1パック150gで120円ぐらいになる。食パンだと50円ぐらいである。
つまり,純粋に購入したお米で家でご飯を炊けば,仮に農協の買取価格が10倍になったとしてもパックご飯を買う程度の負担であり,それほど負担は増えない。高い,高いと言っているお米も,実はそれほど高くないということが言えるだろう。
逆に言えば,米の買取価格が低くて農家は儲からないので,無理して米を作るよりも付加価値の高い野菜や果物を作った方が収入になるというわけである。
政府は今後,海外に輸出する米を現在の年間5万トンから2030年には7倍の35万トンに増やし,国内で足りなくなったらこの輸出用の枠から国内に流通させて調整するという。しかし,収入にならない米を作る農家は激減しており,急な増産をするだけの余力もインセンティブもないので,机上の空論に終わるのではないかと思われる。
とりあえず,備蓄米の放出によって2024年並みの価格で流通させ,高値売りを目指して買い占めた業者を潰したうえで,まさに2030年を目標に米価格をとりあえず昨年価格の5倍(5kgあたり10000円)に誘導してはどうだろうか。これでも,一般家庭ではそれほど負担増にはならない(4人家族で毎日3食ご飯を食べて,54kgで10万円)。それほど,主食価格は抑えられているということである。
むしろ,外食産業がぼったくっているようにも思える。さらに,今回もすでに米を買い占めている輩がいるわけで,何のための農協なのだろうか,という気にもなってくる。
テレビ番組「鉄腕ダッシュ」では,放棄地を開墾して田んぼを作り,そこで手植えで稲を育て,収穫しておいしくいただくという試みをもう20年も続けている。農家の苦労を味わった上で,できたお米のおいしさを堪能する,という意味では重要な視点だと思う。農家がやりがいのある仕事として米作りを続けられるように,消費者も一定の理解をする必要があるのではないだろうか。「Sushi, Sushi」と日本を目指してくる海外の観光客に,本当の米のおいしさはわからないのではないか。われわれ日本人も,もっとお米単体のおいしさを味わって,シンプルに食事をいただく生活に戻った方が幸せだと思う。食事で遊ぶな,と改めて言いたい。