全国的に気温が高く、乾燥注意報も出されている。おまけに春の嵐である。急な強風が各地で吹いている。
こういう気候で各地で山火事が起きている。ロサンゼルスの山火事が2025/1/7に発生して,鎮火したのが1/31。岩手県大船渡市の山火事が2/19発生で2/26に鎮火。そして3/24に岡山県と愛媛県で相次いで発生し,現在も延焼を続けている。
アメリカの場合,森林に落雷があったり,強風で樹木同士がこすれ合って,山火事が発生することがある。広大な国土で,飛行機による巡回監視もされているが,自然の力にはかなわない。
一方,狭い国土の日本で山火事と言えば,筆者が子供のころはハイキング中の「タバコ」や「たき火」が原因とされることが多かった。ボーイスカウトに参加していた筆者は,自分たちがその原因を作らないよう,キャンプでのたき火やカマドの火の始末,設置場所の注意などをしたものである。アメリカのような自然発生の山火事は,ほぼ発生することはなく,人によるミスが原因と考えられる。
2025年に日本で相次いでいる山火事は,いずれも原因が特定されていないが,比較的人家に近い山林で発生している。都会では火を使うこてはほとんどないが,山に近い場所ではちょっとしたたき火や,物の焼却などに火を使う機会も多いのかもしれない。今回もそうした家庭でのたき火が風にあおられて山地に燃え広がったのかもしれない。
昨今,河原でのバーベキューが近所迷惑になるケースが増えている。バーベキュー禁止になった地域もあるのに,禁止地区に入ってでもバーベキューをするグループもある。これも,火の始末やゴミの始末が悪く,山火事の原因の1つとも思えるのだが,河原は比較的開けた場所なので,それほど簡単に火が燃え広がることはないように思える。
しかし,もう1つ怪しいと思っているのが,ソロキャンプに代表される“素人”キャンパーの増加である。お笑い芸人や美人タレント,そして「鉄腕ダッシュ」などでも盛んに取り上げており,日常の仕事や社会に疲れた気持ちを癒すためと称してソロキャンプに入る人が増えているようだ。専門の雑誌や,専門の道具を販売するオシャレなショップもできているようである。筆者の子供のころは,関連する道具を販売していたのは登山専門店ぐらいしかなかった。ボーイスカウトは基本はオシャレな道具など使わないから,リュックサックやキャラバンシューズ,ポンチョ,飯盒などを買うぐらいだった。現在のキャンプショップでは,簡易カマド,火起こしマッチ,火種,火吹き棒などのたき火関係から,食材まで何でも揃うようである。
キャンプ場なら,カマドは決められたところに設置されているが,テントの近くで小さな簡易カマドで火を焚いてコーヒーを楽しむ,などなかなか魅力的なことが書かれている。しかし,ボーイスカウトのキャンプと違って,お酒を飲むことも当たり前のように行われるだろう。たき火をしたまま寝込んでしまったりしないとも限らない。さらに,撤収時に火の始末をきちんどできているのかどうかも怪しい。着火剤や燃焼促進剤といった燃えやすいモノも簡単に使えてしまう。火柱が高く上がってしまうこともあるだろう。
さらにこれがソロキャンプだと,ちょっとした開けた場所があればテントを張ってしまうだろう。周囲の安全も確認しないまま,たき火をして,火が燃え広がらないとも限らない。消火用の水を入れたバケツを常に用意する,など常識と思うのだが,できているのだろうか。
キャンプを,流行やオシャレ,ファッションで始めようと思った人は,十分な指導も受けずに,勝手に始めてしまうことも多いのではないかと思う。後片付けやゴミの処理などを含めて,マナー違反をしている人も多く,土地の所有者などからの苦情も増えていると聞く。
何をやっても個人の自由だが,個人だからといって身勝手に行動していいわけではない。日本で頻発している山火事は,基本的に人間による火の不始末が原因だと考えられる。それが野焼きなのかたき火なのかの原因究明は難しいのかもしれない。ただ,これだけ天気が良くて乾燥し,風が強い日に火を使うという行為は,普段以上に注意が必要だ,という認識が欠けている可能性もある。こうした経験は,野山の体験学習で子供のころに経験させるといろいろと知恵も考えもつくものだと思うのだが,昨今のような社会環境では,危険判断能力が育つとは思えない。残念な世の中になったと思う。