世界陸上東京大会で連日盛り上がっている。トレインチャンネルでのCMも,「やり投げの北口榛花選手の投げ距離がジェット機の長さを超える」「棒高跳びのデュプランティス選手が跳び箱のモンスターボックス55段を超える」「走り高跳びのマフチフ選手がバレーボール日本チーム3人の頭の上を超える」といった派手な合成映像を作り,盛り上げている。
テレビ中継では,進行司会は全員がTBSの女子アナウンサー。これに織田裕二,今田美桜,高橋尚子がほぼすべての競技のコメントを務めている。進行の不慣れ,織田裕二の暴走,そして今田美桜の添え物のようなコメントと,無理やり盛り上げ感が伝わってくる。
これに輪を掛けて不愉快なのが,専門解説者のコメントである。試合前までは選手をさんざん持ち上げるのに,結果が出せなかった途端に欠点や失敗の要因を軽々しく口にする。競技が始まった9/13から昨日の9/18までは連日の真夏日,今日9/18は急に涼しくなるなど,選手にとってベストなコンディションでないかもしれない。そんな中で,いい加減な試合をする選手など1人もいない。あまりにもコメントが上っ面すぎるのである。
こうしたスポーツ解説者の言動は今に始まったものではない。かつてのメジャースポーツといえばプロ野球だが,この解説もひどいものだった。「ここのところ調子悪いですからねぇ」と言った途端にヒットやホームランが出ると,手のひらを返したように「いやぁ,調子戻ってきましたね」とか言ってごまかす。
これまでの試合では,特にマラソン,やり投げの解説が気に入らず,テレビを切ってしまうほどだった。
いずれ,画像解析やGPSセンサーなどを使って選手の動作や位置などを瞬時に分析し,過去の膨大なデータと比べて解説する生成AI解説者が現れるに違いない。その方がよほど公正なコメントをするように思える。
一方で,せっかくの電子機器やカメラの導入によって,フライングやラインオーバーなどを正確に検出できるようになったにも関わらず,最終的な可不可は審判自身が判断するという何とも後味の悪い疑義判定も問題になっている。
また,相手に接触したり押したりする不適切行為も散見される大会になっている。どうも,トップ選手を招くことによる営利目的と,純粋な競技の運営に何かしらの乖離が起きているようにも思う。
日本で34年ぶりに開かれた大会で,しかも注目すべき選手が出てきているのだが,もともと陸上競技は日本人にとっては得意ジャンルではない中で,ちょっと盛り上げすぎたのではないだろうか。邪推かもしれないが,TBSが放送権を獲得したことで,「日本,日本」という盛り上げシナリオばかり先行したような印象がある。
そもそも,企業の業績が不振な現在,社会人チームを解散する動きがどのスポーツにおいても顕著になっている。特にモノづくり企業での解散がどんどん進んでいる。スポーツというエンタテインメントの経済効果は期間限定的だが,所属する企業や国の名前を背負って代表として試合に臨む以上,本業にも好影響があってほしい。肩身の狭い思いをしながら練習しているようでは,実力を伸ばしようがないからである。
どうもメディア側の悪乗りが気になっている今回の大会である。