jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

職域接種の「接種券なしで可」の「後からの登録で良い」の「登録」って何?

2021/6/21から本格的な職域接種が始まったとの報道が相次いでいる。1000人以上で医療従事者と会場を自分たちで用意する,という条件だったため,大手企業や大学が先行すると思われたが,中小企業の協会,観光地域などで独自に人数をまとめたり,社員だけでなく関連会社や家族まで枠を広げて人数をまとめる動きが活発になっている。

 2月から始まった医療関係者への接種,3月から始まった高齢者への接種では,ファイザー社のワクチンのみが使われたため,ワクチンの冷凍管理の不備による廃棄,生理食塩水による希釈のミス,そしてバイアルから5回分~7回分までシリンジに吸引する際の残りワクチンの廃棄問題などがあり,現在でもミスが続いている。筆者は,ロボット開発やWebカメラなどのIT技術も含めて,引き続きこれらを回避する技術的な努力も必要と考えている 農業ITもワクチン保冷のミス撲滅に協力できたのでは - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2021/6/21。

 今日から本格的に始まった職域接種では,管理・運用が比較的楽なモデルナ社製ワクチンが使われる。いつの間にか,大規模接種センター向け以外に職域接種で使えるぐらいの数が確保されているようだ。

 職域接種では,基本的に年齢制限がなくなる。高齢者が必死の思いで個別接種枠で予約をしたのに,1回目が7月,2回目が9月,などという高齢者も少なくない。こういった高齢者でも,職域に該当する場合は職域で接種を受けることができる。

 さらに職域接種では,自治体の接種券が届いていなくても接種できることになった。18歳~64歳の接種券は,一部発送が始まったが,ほとんどの自治体は7月に入ってからの発送になる。職場や大学で接種したいという若い人でも,接種券なしで接種可能で,たとえば20歳の大学生でもすでに1回目の接種を受けたと報道された。

 さて,この職域接種で問題になるのではないかと思うのが,「接種券なしで接種可能」というルールである。接種後,接種券が「届き次第、後からの登録で良い」というのだが,この「登録」とは何のことだろうか。

 そもそも,接種券が自治体で発行され,これを元に予約し,接種を受けた段階では,接種券に「接種したワクチンの種類と日時,接種場所」を示したワクチン接種済みシールを貼る」ということによって「接種したことの証明」になるのだが,ではこの証明が自治体にフィードバックされているかというと,おそらくフィードバックされていない。自治体に「この接種券番号の人には接種しました」という情報がフィードバックされて,これを自治体が確認することで初めて「登録」になるのではないかと思うのである。ただ,ひょっとしたら,接種券にある個人の「券番号」の情報はバーコードになっており,接種した個別医療機関でこの接種者シールの情報が自治体に戻されているかもしれない。自治体がそのバーコード情報を再度読み取って管理していればいいのだが(実際,このバーコードには,1回目接種か2回目接種かの情報や,1回目の予約で接種したかどうかのフラグも入っているので,これを読み取っていれば管理はされていることになる。

 筆者は,この正規の流れですでに1回目の接種を終え,今週末に2回目を接種する予定だが,この情報は当の本人は手元の「接種券」上では証明されるが,自治体は全く把握していないと思われる。つまり,どこにも「登録」されていないのではないかと思うのである。

 同じように,大規模接種センターも基本的には自治体の接種券の発行が前提のため,接種の情報はワクチン接種済みシールによってアナログ的には証明される。しかし,これも接種したという情報を自治体は把握していないので,たとえば大規模接種センターで2回の接種を受けたあと,念のために3回目の接種を自治体の枠で予約して接種するなどということをされても全く把握できない。

 では,「接種券なしで接種」した職域接種の人は,後から接種券が発行されたとして,何をどう証明し,どう登録するのか,ということが全くグレーである。たとえば,職域接種で「ワクチンの種類と日時,接種場所」を記したワクチン接種済みシールを発行することはできるだろう。これを接種者自身が,後日送られてきた接種券に「自分」で貼るということもできるだろう。しかし,個別接種,集団接種,大規模接種センター接種では,ワクチン接種行為をした医療関係者が接種券にこのワクチン接種済みシールを医療従事者の責任として貼付し,同時に接種者シールを回収して接種者に渡すことで,接種証明の事実が担保される。しかし,職域接種ではシールの貼付を個人に委ねるとすると,接種証明の事実は担保されないことになる。

 これを担保するためには,職域接種では接種時にワクチン接種済みシールは発行せずに預かりとし,「後日」接種券が発行されたら,それを職場に持ってきた時点で職場の医療関係者が確認して接種券にワクチン接種済みシールを貼り,接種者シールを回収する,という流れを作る必要がある。でないと,個人にワクチン接種済みシールを渡してしまうと,それを紛失したときにどうするのか,という問題が起きてくる。再発行をした場合,紛失したと思われた接種済みシールが出てきたり,他人に使われても,これを証明する方法は何もない。

 仮に,自治体発行の接種券で個別接種した情報が速やかに自治体に「登録」されていたとしても,すべての自治体が同じ土俵で登録されているかというと,自治体間の情報の互換性がないため,何が「登録」なのか,その「登録」によって何が証明されるのか,一切の権限がない。アナログ的にワクチン接種済みシールの付いた「新型コロナウイルスワクチン 予防接種済証(臨時)」がどんな効力を持つのかも,現時点では全く不明で,これをワクチン・パスポートと思っていても,どこで使えるかも分からない。

 ワクチン接種券の「接種者シール」のバーコードが確実に自治体に戻され,それを自治体が確実に読み取っていることを期待したい。あるいはこの業務を個別医療機関がさせられているのだろうか。それはあまりにもいい加減な管理と言わざるを得ないのではないだろうか。もし,この接種券の「接種者シール」のバーコード読み取りが機能しているなら,大規模接種センターでの接種時には接種券を持って来ているわけだから,この接種者シールはセンター側で回収し,その接種した情報を自治体に返すことは可能なので,「大規模接種センターで接種した人は自治体での接種予約を取り消してください」と言わなくても,すでに接種状況によって予約を取り消し,その枠を別の人に移すなどの手配ができると思われるのである。

 さて,「接種者シール」の回収を職域接種会場で改めて行うのだろうか。実際はワクチン接種済みシールを個人に渡して,そこで管理終わり,となって,「登録」がウヤムヤになるのではないかと危惧するのである。