有線ケーブルの難点は,コネクタ部の破損が起きやすいことにある。接点側が曲がって接触不良になることも多いが,コネクタとケーブルの境目が割れて断線することも多い。交流100Vのコンセントに挿すコネクタですら,接点が曲がったりケーブルが断線することもある。
電化製品を含め,ほぼあらゆるコネクタは生産が自動化されており,軟質ビニールの被覆で覆われている。電源コネクタは破損しても,DIYショップに行けばコネクタだけを購入し,簡単なネジ止めだけで2本のケーブルを固定すれば復活はできる。しかし,こうした素人工事は原則は禁止されているだろう。
有線のイヤホンは,かつてはプラスマイナスの同軸ケーブルが両耳用に2本,合わせて4極のケーブルでつながっていた。イヤホン自身が音が出なくなった場合は仕方がないが,コネクタ側は代替部品を購入することができた。通常のビニール被覆の同軸ケーブルなので,被覆を外してコネクタにハンダづけすれば直すことができた。同じように,かつて入手しにくかった延長ケーブルも,自作することができた。昨今のイヤホンは,途中にあるボタンで音量調節ができたり,音楽の曲選択ができたりと,ケーブルの極数が増えたため,DIYはあきらめている。無線のイヤホンも増えており,それほどこだわらなくなったこともある。
さて先日,有線マウスのUSBコネクタ近くでケーブルが断線してしまった。実験のつもりでこのコネクタを切り離し,自作用のUSBコネクタをAmazonで見つけ,購入した。標準のUSB-Aの2.0対応の4極のコネクタである。
ところが,ケーブルの被覆をむいて驚いた。たしかに4極の電線が入っているのだが,これが見たこともないものだったのである。
通常,極細ケーブルでも,中の複数の極の電線はビニール被覆方式であることがほとんどである。ビニール被覆をむけばその中に撚り線(より線)が現れる。これをハンダづけすれば接続は可能である。
ところがこの有線マウスのケーブルは,4色(赤,青,緑,銅色)なのだが,各色が複数の電線を撚り合わせたものになっていた。通常見られるはずのビニール被覆がなかったのである。
正直,このブログを書くに当たって,このタイプの極細ケーブルの名称や種類を調べたのだが,どうしても見つからなかった。おそらく,ビニール被覆ではなく,いわゆる「エナメル線」という塗装被覆なのだと思われる。
筆者はかつて手作り工作として,太さ0.5mmぐらいのエナメル線をぐるぐると巻いてコイルを作り,モーターを回した。この時のエナメル線は,ナイフで被覆を削ったり,火で被覆を焼いて接続できるようにした。
今回のマウスケーブルは,太目の髪の毛ぐらいの太さで,取り扱いが非常に難しく,被覆をどう処理していいかわからなかった。さらに,購入したUSBコネクタが,中の電極とその周囲のプラスチック部品が密着しており,普通にハンダづけしようとするとプラスチックが溶けて変形してしまった。とても4極を正しくハンダづけできるとは思えなかった。
結局,この購入したUSBコネクタの使用をあきらめ,別のUSBケーブルを1本犠牲にして,ケーブルの途中で接続することにした。このUSBケーブルは4極で,中はビニール被覆のケーブルが入っていた。何とか4本をハンダづけしたのだが,被覆がきちんとむけていたのか分からないまま,接続した。最終的には接続はうまく行き,マウスも正常に動作したので,そのまま固定することにした。
筆者は、小学生のころからラジオの自作でハンダづけには結構自信があったのだが、今回、コネクタのプラスチック部品を溶かしてしまい、ちょっと自信を失ってしまった。現在、こうしたケーブル類のほとんどは中国で作られているだろう。自動機械で次々と作られ、作業員は部品をセットするのに追われるような現場と思われる。安く供給するためには仕方がない。ハンダづけも機械化されているだろうし、機械的な圧着で接続しているだけかもしれない。壊れたら修理ではなく、交換して廃棄、が当たり前になっている。実際、マウスすら100円ショップで500円で売られている。ちなみにUSBコネクタも送料込みで500円もしたので、買い替えればすんだ話でもある。そこは、昔人間のもったいない精神が許さなかった。
この極細エナメル線(?)の正式名称が分かればまた追記したい。
【追記】4極のこのケーブルは,「4コアエナメル線絶縁ケーブル」というようである。AmazonサイトやAliExpressサイトで見つかった。写真のような細線ケーブルである。

エナメル(ワニス=ニス)でコートしているため,ハンダ時の熱で被覆が取れて接続できるようである。