筆者のクルマには,ソニー損保の「GOOD DRIVE(安全運転でキャッシュバックプラン)」の専用デバイスが取り付けてあり,測定用のアプリがスマホに搭載されている。加速度を検出し,アクセル,ブレーキ,ハンドルの操作状況を判断して点数化し,安全運転をしているかを判断している。最初はある程度減点もあったのだが,その後は基本的に100点満点を続けている。
Yahooのカーナビアプリ「Y!ドライブ」にも,加減速の測定・記録機能があり,ときどきレポートが送られてくる。基本的には安全運転を心がけているので,怒られたことはない。
近年,あおり運転や逆走など,ドライバーの精神的な異常によると思われる事件・事故が頻発している。また居眠り運転,飲酒・酒気帯び運転もあるし,さらにはドライバーの急死による暴走事故もかなりの数が起きている。ドライバー本人が気づいていない場合や,自分を正当化している場合がほとんどであり,巻き込まれた側はたまったものではない。「うっかり」や「過失」レベルではない。いわば「未必の故意」であり,「殺人・傷害」を基本とすべきだと思われるほど,理不尽な案件である。
これはもう,クルマ側がドライバーの適性を判断して,運転をコントロールするしか方法がないと考える。しかし,結局は無謀運転をするドライバーは,提案するセンサー類を外したり,コンピュータの設定を変更したりして,自分の思い通りに走ってしまうだろう。その動きについては,カメラ映像やGPS情報などからクルマの位置や速度,動きなどを捉え,ビッグデータ処理で割り出すシステムも同時に構築しなければならないだろう。
まず,飲酒や酒気帯びに関しては,クルマにアルコールセンサーの取り付けを義務づけることを提案する。乗車時にセンサーに呼気を吹きかけ,アルコールが検出された場合にはエンジンが掛からないようにする。他人のなりすましを防ぐために,顔認証で測定時の人物と運転時の人物を判断し,入れ替わりがあればエンジンを停止させるような仕組みも必要である。
次に,上記のような加速度センサーの取り付け義務である。急発進,急ブレーキ,急ハンドルなどが繰り返される場合,警告を発し,改善が見られない場合はエンジン停止させる。
居眠り運転や急病・急死による暴走については,検出システムの搭載が必須である。検索してみると,国土交通省のサイトに「ドライバーモニタリング(眠気・居眠り検知) システム 基本設計書」(https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001377623.pdf)なる資料が2020年で見つかった。開発,搭載の状況はどうなのだろうか。2023年には「次世代AIドラレコサービス『DRIVE CHART』」なるサービスもうたわれている。しかし,搭載されていることなど何のアナウンスもない。
逆走への対応はさらに喫緊の課題である。複数台が巻き込まれ,死亡事故となる危険性が高い。逆走車をどうやって停めるか--追い越し車線を通行禁止にして,とにかく逆走車とぶつからないように出口まで誘導して捕捉するアイディア - jeyseni's diary (2025/5/26)など,インフラ側の対応についても提案してきたし,ドライバー本人への注意喚起方法についても対策が取られているが,ドライバー本人が逆走を意識していない,あるいは対向車が逆走していると思い込んでしまう,といった異常な精神状態になっている。これはクルマ側が判断して路肩への停車をさせるしかない。
1つは,準天頂衛星システム:QZSS みちびきを利用した超高精度なGPS位置測定による車両コントロールが挙げられる。車線単位でクルマの走行方向を検知できれば,逆走していることが検出され,停止措置などが可能となる。しかし,みちびきのホームページを見ても,対応しているカーナビやドラレコはほんの数機種しかない(カー用品(カーナビ・ドラレコ等)|みちびき対応製品|みちびき(準天頂衛星システム:QZSS)公式サイト - 内閣府)。また,みちびき衛星の位置を表示するスマホアプリはあるものの,スマホ自身がみちびきGPSに基本的には対応していないため,スマホのナビアプリでは対応できない。上記の公式サイトでは「geographica」が紹介されているが,スマホ自体がみちびきに対応していない現状では高精度測定はできない。
【追記】追加で調べてみると,iPhoneは対応しているようだし,複数のスマホの対応状況が紹介されていた(スマホ・タブレットPC|みちびき対応製品|みちびき(準天頂衛星システム:QZSS)公式サイト - 内閣府)。また中国のOPPO,Xiaomiのスマホも対応しているようである。
こうしたセンサー類による複数のシステムの対応について,個別には未搭載だったり,未対応だったりするし,意図的に外したりする輩も出てくる。となると,クルマ自身がインテリジェンスを持って,ドライバーを「採点する」頭脳を持つ必要があると考える。つまり,「ドライバー採点AI」をエンジンコントロールの中に組み込んでしまうのである。
ドライバーの一連の動きを検出し,おかしなパターンに対して注意喚起をし,警告を発した上でエンジン,ハンドル,ブレーキを制御して,とにかく「停止」させることで,巻き込み事故の発生と被害の大きさを最小限に抑えるような仕組みである。
これから開発・発売される新車は搭載を義務づけるとともに,70歳以上の高齢ドライバー,業務車両(タクシー,バス,マイクロバス,トラック,ワンボックス,軽ワゴン,軽トラック)への追加搭載を必須とする。ハンドルやブレーキをコントロールする仕組みは開発にまだまだ時間がかかるが,エンジンや駆動モーターを止める制御回路なら,途中組み込みが比較的容易と考える。同時にハザードランプは点滅させ,後続車の追突を最小限にとどめる。なぜ停まったのかについてもドライバーに音声で解説し,気づかせる,そんなシステムが必要である。
「自動車」だからドライバーの言うなりになる,と考えがちだが,「正しい場合は動く,間違っている場合は動かない」ことが,今後のクルマに求められると思う。とにかく「停まれば安全性は向上する」(残念ながら確保まではできない)のがクルマである。飛行機なら異常時でも飛び続けなければならないし,船であれば水に沈んでしまう。しかし,クルマならとにかく「停める」ことが重要と考えるべきだろう。