東京メトロが、2023年2月28日で回数券を廃止するというお知らせポスターを見た。駅の窓口に貼り出してあったのだが,普段はまったく利用しない窓口だけに,戸惑った。すでに10/26にアナウンスはしていたようだ 東京メトロ、一部を除き回数券廃止、ポイント還元にランク制導入(BCN) - Yahoo!ニュース。JR東日本の回数券廃止につい先日出くわしたばかりである JRの普通回数券が(ほぼ)なくなった--モバイルPASMOとモバイルSUICAが共存できないスマホも【追加情報】 - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2022/10/10。
JR の場合は、モバイルSUICAの回数利用でのポイント還元が行われている。東京メトロでは,紐づけしたPASMOカードとメトロポイントによるポイント還元となるようだ。
何度も書いたが,ポイント還元は「インチキ」である。電子マネーの場合でも,同じ電子マネーとして使わない限り,だいたいは1年で消滅してしまう。ポイントを現金として口座に還元しようとすると,還元率が落ちる。筆者の場合,かつて大型量販電気店のポイントカードで大きな買い物をした際のポイントですら,うまく使えなかった。小物や消耗品で消費すればいいが,それほど頻繁に必要なわけではないからである。まっして数円単位分でつくポイントで「次回,5円割引」と言われても,その次回がいつ来るか分からないし,そのときに利用できるかどうかも分からない。それなら同じクオリティで5円安い品を買った方が,筆者にとってはお得感があるからである。
さて、JRではQRコードを読み取れる自動改札機の導入を予定しているという QRコードを使用した新たな乗車サービスの導入について (jreast.co.jp) 2022/11/8。どういう使い方をするのだろうか。スマートフォンを使ってネットでチケットを購入し,その情報をスマートフォンでQRコード表示し,QRコード読み取り改札で読み取らせて使用する,という使い方のようなのだが,2つの点で懸念がある。
1つは,情報の信頼性である。QRコードは現在,だれでも自由に発行できる。おそらく,チケット情報は単純なので,それにスクランブルをかけたQRコードを表示させるのだろうが,SUICAやスマホのNFC認証と同等の信頼性を確保できるのか,という点に疑問を持っている。
もう1つは,読み取り速度である。JRはすでに,QRコードの読み取り速度を通常の1.5倍,読み取り範囲を2倍に広げる読み取り側の技術を開発したと発表している。もともと,通常の横棒式のバーコードに比べて,QRコードは読み取り速度が速いという特徴があるはずなのだが,これが筆者にとっては「本当なのか」といつも疑問に思うのである。感覚的には,最低でも2秒ぐらいは静止させないと読み取らない。筆者のスマホでのQRコード読み取りもそうだが,ガソリンスタンドでの割引用QRコード読み取りの際も,かざして手を固定してから「1,2」と数えないと読み取ってくれない。せっかく,SUICAやNFCという高速・高信頼の読み取り技術を提供していながら,あえてQRコードにも広げる理由が今ひとつ分からないのである。
あえて3つ目を挙げると,これはペイ系の電子マネー全般に言えることだが,「スマホを取り出して」「画面を表示させて」「アプリを起動して」「QRコードを表示」させる動作が,筆者にとっては実に煩わしいのである。これは,多くの店舗で展開されているクーポン券使用においても同様である。レジに並ぶ前にこの作業をしておかないと,レジ前でもたもたして他のお客さんに迷惑がかかる。「自分のペースでいいんだよ」というエセ広告団体のCMが流れるが,現実はそれほど甘くはない。特にコンビニは「急ぐ人がすばやく利用できる」ことでこれほど多くの店舗展開となっている。ここで割引を期待して,そのためにさらに回転率が下がっては,コンビニの価値を削いでしまうことになる。
交通系電子マネーは,スマホのNFC認証と紐づけされているので,遠距離きっぷは,モバイルSUICAで決済すれば,スマホアプリを起動しなくても,改札口でのスマホタッチで認証される。わざわざQRコード認証機能を提供する必要はあるのだろうか。
航空業界では,ANAがチケット購入から搭乗手続きまでを電子化しているが,搭乗口ではQRコードをスマホで表示して認識させる方法のようである。これまでの搭乗券を読み込ませるよりははるかにスマートになったように見えなくもないが,おそらく立ち止まってスマホを取り出して読み取り機にかざして認証し,スマホを片付けて荷物を押す,という流れは,紙の搭乗券による認証よりも時間がかかるのではないか。ここでも,スマホのバッテリー切れの影響が心配される。
すべての電子マネーで嫌なのは,あらかじめ1000円単位でチャージしておく必要があることである。チャージがなければ精算できない。精算機でチャージをしてから精算すると,通常の2倍以上の時間がかかり,他のお客さんに迷惑がかかる。オートチャージするには,銀行のオンラインサービスの手続きをまずしなければならない。
これに対して,QRコードによる切符の発券は,発券機で現金で購入できて,無駄な紙のチケットの印刷や管理がなくなるという,SDGsの観点では事業者側も利用者側もメリットがある使い方を提供できる。利用者は,改札機前でスマホの操作をする必要はあるが,そこは目をつぶるとして,単純に切符のペーパーレス化ができる。
同様に,回数券の仕組みも,ペーパーレス化ができる。現金で購入し,発券されたQRコード回数券なら,これまでと同様,10回分で11回乗車できる,という割引切符を購入できる。その回数カウントの仕組みは,かつてのオレンジカードと同様,実に簡単に実現できるはずである。これならば,購入時に割引が即受けることができる。インチキポイント還元という小賢しい手法よりも消費者にはメリットがある。
もちろん,現金購入でなくても,オンラインで購入できればそれなりにメリットはある。というのも,駅でQRコードで発券された場合,そのコードを他人に盗み取られる危険がないとも限らないからである。発券画面を水平にするなどの工夫が必要だろうが,おそらく発券機の正面に表示されるから,後ろからその画面を撮影されれば簡単に盗まれてしまうのではないかと危惧する。
QRコード対応の改札機の設置が,急速に進むとは思えない。せっかくのSUICA路線を逸脱する必要はないのではないかと思うのである。