3月に入って,関東地方もいったん降雪に見舞われるような寒波を受け,最終的には大雪にはならずに済んだ。関東にとってはちょっとした「お湿り」で乾燥状態が若干緩和されたのに加え,山火事が10日間も燃え広がった岩手県大船渡市にとっては恵の雨となり,一気に鎮火して3/9に鎮火宣言が発出された。自然の力は,やはり侮れない。時には大災害を引き起こすが,ありがたい存在である。
この季節はお湿りの後に大量のスギ花粉が飛散することで知られている。花粉の第1陣はバレンタインデーの辺り(2/14),早い場合は1月中旬から飛散を始める。特に覚えやすい日としてバレンタインデーを目安にして,抗ヒスタミン剤やステロイド剤などの花粉対策薬の使用を始め,受容体に先回りしてブロックすることで症状を緩和することが推奨されている。もちろん,マスクの着用も有効な手段である。
ところが,このスギ花粉が大気汚染物質の影響を受けて,飛翔中に弾け,花粉の中にあるより微細な物質がまき散らされる形に進化しているという。一般に,スギ花粉がマスクの隙間から呼吸器系に吸い込まれ,鼻粘膜や喉粘膜に付着,その粘膜の湿気によって花粉が弾け,中からアレルゲンとなる微粒子が飛び出し,これに免疫反応を起こして粘膜が腫れたり,粘液(鼻水)が出たり,くしゃみが出たりする。そのプロセスがすでに空中を漂っている段階で微細化することで起きているというのである。
通常のスギ花粉は,マスクで捕捉されるのだが,この弾けて微細化したスギ花粉粒子は,一般のマスクを通り抜けてしまうという。悪玉である。したがって,マスクの隙間を作らないことはもちろんのこと,特に吸引される鼻孔の下にガーゼを丸めてさらにフィルター効果を持たせることが効果があるという。
日本でのスギ生産は,他の木材種に比べて圧倒的に多い。

(第1部 第III章 第1節 林業の動向(1):林野庁)。広葉樹は主に木材チップ用に使われてきたが,近年は生産量は激減している一方で,スギは順調に増えており,生産面積も6割に近いという。木造住宅の構造材を中心に,家具やスノコなどさまざまな用途に使われている。このために植林も続けられている。
昨今は,少花粉スギや少花粉ヒノキが開発され,伐採した後の再植林には花粉の少ない苗が植えられつつある。無花粉スギ品種「林育不稔1号」というのも開発されているようである。
森の入れ替わりには50年ぐらいかかると考えられることから,明日から花粉症の原因がなくなる,というわけではない。当面は,物理的にはマスク,薬の適正な使用によって,花粉の季節をやり過ごすしかないようである。もちろん,レーザー治療などの医療的な対応も選択肢に入るだろう。
花粉症は歴史も長い。世界では1819年に最初の報告があり,日本では1963年にブタクサ花粉症、1964年にスギ花粉症が報告された(厚生労働省:平成21年花粉症対策)。現在では国民3人に1人が罹患しているという。有病率は,1998年が19.6%、2008年が29.8%、2019年には42.5%で10年ごとにほぼ10%増加しているという。悪玉微細スギ花粉粒子により,マスクをしていても花粉を吸いこむ危険性が高まる。まだまだ増えてしまいそうな勢いである。とにかく,マスクで一次的に防ぐことが肝心と改めて認識したところである。