jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

事業ドライバーの「点呼違反」は業界の日常?--日本郵便だけではないように思える

日本郵便が,日常の点呼業務をしていなかったことで,車両使用停止の行政処分がされることになった。数千台のトラックやワンボックスカーなどが使えなくなるという。これらの配送業務をどうするか,業界もユーザーもその行方を見守っている。

 筆者は,ボリューム的にこれらの配送業務を大手を含む他の配送システムに切り替えて運用するには限度があるのではないかと予想し,至急,車両とドライバーを別会社に移して,そこで管理された配送業務を行う流れを作るべきではないかと提案した(日本郵政の「自動車貨物運送の事業許可取り消し」への対応予測--担当職員の解雇と同時に運転専門会社を新設し委託へ - jeyseni's diary 2025/6/6)。

 しかし,この「点呼違反」というキーワードで検索してみると,各地で多くの運輸会社で処分が下されていることが分かった。その中には,いわゆる大手2社も含まれていた。ほかにも,タクシー業界,鉄道業界,そして航空機業界でも,運転者に対する点呼義務が法律で決められている。ドライバー,運転士,パイロットと呼ばれる人たちが,お客の安全を守り,交通ルールを守る,ということは当たり前のはずだが,実態はウヤムヤになっている場合も多いように思われる。

 筆者にとって,電車の運転士は子供のころに憧れた仕事の1つである。業務の引継ぎ時の声掛け,行先案内表示の指差し確認などをしている姿は「格好いい」とさえ思った。しかし,現実はなかなか厳しい(乗り物の運転士になりたかったが--現実は厳しい仕事である - jeyseni's diary 2024/5/26)。

 現在,放送中のドラマ「PJ 〜航空救難団~」(テレビ朝日系)や,カズレーザー氏が見学番組を放送する自衛隊,そして救急,消防,警察など,国民の生命を守る業務に関わる公務員は,組織的に厳しい訓練が行われ,点呼や報告なども,いわば「軍隊式」が基本であるように思える。それを「格好いい」と見るか,「時代遅れ」と見るかによって,価値観が変わってくる。ドラマの主人公は,その日常も含めて自分の仕事への誇りとして描かれるだろうが,現実にはいろいろな感情が伴うのではないだろうか。そして現実には,多くの脱落者が出ているはずである。中にはタレント業に転身して,そのときの体験を飯のタネに使っている人もいる。

 日本郵政公社が2007年に民営化し,そこに働く人たちは公務員ではなくなった。しかしおそらく公社時代から現在のような点呼違反の体質が続いてきたと思われる。業務内容が,人命に関わらない「物流」だからである。おそらく物流業界全体を見ると,基本的には「点呼や業務報告など軍隊式のやり方はしなくてもいい」といった雰囲気があるのではないだろうか。何しろ,ドライバーの数は足りない,荷物の数は増え続ける,利益が上がらないから待遇も改善できない,となれば,運転者はアルバイトでやりくりするといった体質になりがちだろう。バイト君にもなるべく長く続けてもらいたいから,管理が甘くなる。点呼や報告なども,実施していたとしても馴れ合いになっているのではないだろうか。

 ドライバーの業務改善のために総労働時間やシフト間隔などの規制を厳しくして,過労死や運転中の事故を減らそうと健康管理が義務付けられている一方で,労働環境や待遇など,不十分な面もあり,しかもエッセンシャルワーカーとの位置づけで社会的な評価も高くならない。

 逆に,人命を守る立場にある医療機関介護施設,幼稚園や保育園,小中高校などは,適切な業務点検がされているだろうか。ドラマでは,ナースステーションでの業務引継ぎなどはきちんとされているように描かれているが,肝心の医者は自己管理だけなのではないかと思える。昨今の医療事故も,こういう体質から生まれているように思える。

 会社組織を維持するには,規則が必要であり,それには管理が必要になる。その管理されることを良しとしない人々が増えている。厳しい就職活動の結果,ようやく入社したとしても,その雰囲気に慣れず,どんどん辞めたり転職したりする。個人の活動が中心のタレントやYoutuber,ミュージシャン,そして個人投資家,そして政治屋なども,自分勝手に生きようとしている。アルバイトをしてもまともな働き方などしない。

 JPのケースは,長年の独占的な巨大組織の中でのぬるま湯を引き継いできた結果だが,働く側としてはある意味で「楽ちん」な職場だったのではないだろうか。今回の行政処分は,企業の解体の危機にもつながりかねない。筆者が提案するように,とりあえず別会社に組織替えした上で,経営者の総入れ替え,社員教育の再徹底を図るべきだろう。残念ながらかなりの人が脱落していくことになるのではないだろうか。あるいは,本気で仕事ができる人なら,他社でも活躍できると思われるが,評価は厳しくなることを覚悟する必要はあるだろう。