jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

法律改正では動きが遅い--即断即決できるのは日銀だけか

ロシアに対する最恵国待遇を廃止し,関税の優遇措置をなくす,ための法律を今の国会に提出する,準備を進める,と発表した,というニュースが2022/3/31にあった。ロシアから輸入する木材の関税は4.8%から8%に,サケやいくらは3.5%から5%に、カニは4%から6%などに上げられ,ロシアに対して経済制裁を追加する,ということになるのだそうだ。

 ううむ,これで,法律が改正され,それが施行されるのは,いつのことになるのだろうか,と思ってしまう。またそもそも,法律改正案が国会で通るのかについても,若干の疑問は残る。反対する党はないと思うが,逆に「この程度の制裁でいいのか」とか「ほかに方法はないのか」とか,「何を今ごろ,改正案を提案するのか」とか,イチャモンをつけたりして,採決までに時間がかかったりするのではないか,と心配する。

 こういう国際問題について,日本の三権分立は極めて動きが遅い。すべて合議制が前提となり,これが民主主義だと主張し,言論の自由だとする。行政ができるのは,相手国に対する抗議と同盟国での協議・調査依頼だけなのだろうか。トップ会談,つまり日本の首相と相手国の首相や大統領による電話会談は,外務省がアレンジするのだと思われるが,他国がまずホットラインを使っているように見え,その後で及び腰で電話をかける,というように見える。

 確かに,アメリカやイギリス,フランスなどの諸国は,仮にケンカ(戦争)になりそうなケースでも軍事力という後ろ盾がある。軍事力による抑止力を保持しているから,強気に出ることができる。一方,日本は防衛力を持つといっても,正直言えばほぼ無力である。北朝鮮の飛翔体も補足も追跡もできず,仮に本土に落下の危機があったとしても,それを迎撃する手段を持たない。何の打つ手も出せないまま,多くの国民の命が失われ,国としての形がなくなってしまう。

 円という世界で通じる武器を自由に操れるのが,日本銀行総裁黒田東彦氏である。日銀の中でどういう議論が行われているのかはブラックボックスだが,最終決定は黒田総裁が即決しているように思える。2022/3/30に日銀が踏み切った「連続指し値オペ」(国債を決まった利回りで無制限に買う公開市場操作)は,日銀が独自に決めて発表,実行した。これにより円が売られて急落し,一時期1ドル125円まで下がった。急激な円安は,日本経済に大きな打撃を与えるが,日銀は金利の上昇を強く抑え込むためとしている。これによって,インフレが抑えられるのか,あるいは抑えきれずにスタグフレーションを起こすのか,残念ながら筆者には読めない。

 アメリカ大統領には,「大統領令」という権限があり,議会の承認を得ずに実施できる。日本の首相には,この独自の権限がない。国際動向の中では,いかにも初動が遅いという印象がある。

 複数の参謀に意見は聞くとして,国のリーダーが常識の範囲で声明を出したり行動をできる権限を,日本も持つべき案件ではないかと思われる。戦後に平和な環境を得,経済で発展してきた段階は,正直言えば日本は何も発言しなくても何も行動しなくても,世界から一目置かれる存在だった。しかし,2000年に入って事態は一変している。これほど,複数の隣国からの武力行動(ミサイル発射,領海通過,不法占拠)にさらされているのに,「抗議する」と声明を出すだけで一向に事態は改善していない。

 さらにウクライナ侵攻に対する「G7各国と足並みを揃えて」経済制裁をすると宣言したために,ロシアから最恵国待遇国と見なされなくなった。欧米各国はすでに軍事攻撃・防衛の態勢を整えており,これを背景に交渉しているが,日本には軍事力がなく,いわば丸腰である。北方四島交渉は一方的に打ち切りを宣言され,エネルギー輸出に関してルーブルでの支払いを一方的に宣言されたのに,打つ手がない。

 防衛省航空自衛隊三沢基地青森県)にアメリカ製無人偵察機グローバルホークを配備したのが2022年3月12日。これを何に使うのかと言えば,北朝鮮からのミサイル攻撃に対する防衛だと思われるが,発射を確認できても防戦する方法がない。24時間飛ばして偵察するのかどうかもわからない。

 為替相場も,一瞬の操作ミスで損得の差が大きく異なる。経済は即断即決が必要であり,世界の相場の動きに即応するには勇断も必要になる。(だから為替投資はバクチだと筆者は思っているし,“投資家”と呼ばれる多くの人たちは,バクチ打ちだと思っている。カジノと同じである。これを健全な経済行為といえるのか,そして中高生から経済の仕組みと称して投資の知識を教えたりしている現実を,非常に憂慮している)。

 しかし,国と国の間の力の駆け引きも,もはや一瞬の猶予も許されない状況に来ている。COVID-19における海外との人的交流の一瞬の判断ミスで,国内へのウイルス蔓延を招いてしまった。岸田首相の鎖国政策は,ザルがあったのは残念だが,筆者は評価している 鎖国批判はあるかもしれないが勇断と評価--南ア側も冷静に成り行きを見てほしい - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2021/11/30。

 追い込まれたロシアに対して,軍事力のない日本なら何ができるのか,そしてその手段をいかにすばやく実施できるのか,至急考えなければならない。場合によっては岸田首相は,日銀の持つ円の力を活用する方法を考えて,黒田日銀総裁と組んで行動を起こすという選択肢があるのではないか,と考える。