2020年1月ごろからのCOVID-19の世界的な蔓延が始まって3年目に入るが,引き続き厄介な状況が続いている。筆者は当初,2週間~3週間という短期間に徹底的に封じ込める,いわゆるロックダウンで感染者を炙り出して徹底的に隔離する方法を提案した 2週間の完全封鎖でケリをつける!! - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2020/5/20。そもそもの世界的拡大の起点となった横浜港の豪華客船ダイヤモンド・プリンセスでの封じ込めがいい加減だった。その後の感染拡大のペースが他国に比べてゆっくりなのは,日本特有のマスク習慣,衛生観念があるからだと指摘した 日本型感染症対策モデル「日本モデル」の輸出をするための気構え - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2020/6/26。それでも,マスクの完全着用はされず,抜け穴があちこちにあったために,日本での感染拡大の抑え込みは成功はしていない。岸田首相による2021/11/29の海外からの渡航禁止というすばやい対応を筆者は評価している 鎖国批判はあるかもしれないが勇断と評価--南ア側も冷静に成り行きを見てほしい - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2021/11/30 が,あとから分かったのは結局は抜け穴だらけだったということだった。
オミクロン株への変異により,世界中での感染再拡大がなかなか止まらない。これまでの人類の経験により,日本を含めてテレワークの呼びかけと実施もできるところでは行われている。しかし今回の波では,医療従事者と彼らを含むエッセンシャルワーカーの感染が急速に進んだことによる,経済の停滞の恐れが再び見えたことである。
しかし,諸外国はオミクロン株による経済の停止をしないという選択をいち早くしている。デルタ株に比べて重症化率が桁違いに低いことがその最大の理由である。無症状,軽症での人流によって感染拡大はさらに進むものの,重症化を防ぐ治療薬の使用により,治癒して1週間程度の短期間で退院する人も増え,病床の回転率もかなり高い。
さすがに病床逼迫感が強まっているアメリカは,2022/1/10に1日に140万人という桁違いの感染確認者を出しているが,日本と違ってパニック感が少ない。薬局を含めて街のいたるところでPCR検査もでき,医療機関も区分けがないからだろうか。それでも医療従事者への感染拡大による影響が大きいため,無症状,軽症の医療関係者には医療行為ができるような施策に変更された。医療関係者は完全防護服なので,そこからの感染拡大はない,というやや大胆な判断である。これはある意味で評価できる。
一方,日本では2022/1/12に1日1万人超えの13249人,翌1/13に18859人と1/2の553人に比べて30倍という顕著な増加傾向を見せており,沖縄,山口,広島で1/9から2月末までの蔓延防止等特別措置が出された。東京も病床率20%で特別措置,50%で緊急事態宣言を検討するという発表があり,今日にもその基準に達するのではないかという懸念がある。2022/1/13時点の病床使用率は15.1%(確保病床数6,919に対して入院者数1,048 人)である。医療関係者の感染も拡大しており,その周辺での濃厚接触者として認定されると14日間の自宅待機をしなければならないという現在の運用が足かせになっている。一般企業においても感染者が発生した場合は,同じ部屋にいる社員全員が濃厚接触者という定義になるため,企業活動が停止してしまうような状況である。
特にエッセンシャルワーカーと呼ばれる職業の人の活動停止による経済の停滞への影響が大きい。海外では,地下鉄の運転者や航空機のパイロットの感染によって,便そのものが減便せざるをえないという状況が起きているし,ゴミの収集業務も滞って,街中にゴミがあふれかえる,という状況も起きている。もちろん,医療関係者もエッセンシャルワーカーである。
海外ではいち早く,エッセンシャルワーカーへのワクチン優先接種の動きがあった 年内,1月いっぱいの外出を自粛します - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2020/12/20 のブログの中で紹介している。その後,日本でもワクチン接種が始まった際,医療関係者の次は高齢者とエッセンシャルワーカーという言い方がされたが,果たして適切に接種券が送られたのかどうか疑問である。年齢による輪切り発送しかできなかったのではないか。
さらに思うのは,海外の場合はいまだに,エッセンシャルワーカーは移民や有色人種を中心とした貧困層で成り立っている傾向が見られるのに対し,日本は日本人が担っている傾向があることが気になる。いわゆる格差社会なのだが,海外の場合は社会が線引きを容認している傾向があるのに対し,日本ではグレー,あるいはブラックな線引きがされており,これが陰湿な差別につながっているように思えるのである。
COVID-19と最前線で闘っている医療関係者は,本来称賛されるべきなのに,感染リスクが高いという理由で関係を排除する傾向はいまだに世界中にある。日本でも,そのストレスに堪えきれずに離職する看護師が多数いる。
一方で,製造業の現場や,コンビニエンスストアを含む販売業,そして飲食業など,テレワークできない仕事も多い。ここもエッセンシャルワーカーとして認識すべきではないのか。特に飲食業は,店内の感染拡大対策に膨大な時間とおカネを使っている。営業時間短縮やアルコール提供禁止などの締め付けも真っ先にやってくる。そこの従業員の安全を確保するためのワクチン優先接種もされず,店頭や地域での抗原検査によるホワイト・ロックダウン(店内や地域全体で感染者を入れないことで自由に営業を続ける施策)も行われなかった ホワイト・ロックダウンの実施を - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2020/7/9。結局,保証金はその後支払われたのかについてもウヤムヤになっている。
日本の社会は,50%がエッセンシャルワーカーなのかな,という捉え方ができるかもしれない。要は,テレワークできない職業はすべてエッセンシャルワーカーと言えるのではないか。オフィスワーカーがすべてテレワークに切り替えれば,人流が半減する。メタバースの社会では,これが実用化する 「メタバース」--クラウドに続いてまたまたネーミングで先を越されたと感じるIT - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2022/1/7。逆に,物流のためのエッセンシャルワーカーが増えるという反作用もあるが,物流にドローンや自動走行ロボットがどんどん導入されることになるだろう。人との接触の機会が減り,危険性も低くなる。しかし,こういうパラダイムシフトが起きたら起きたで,またおかしな人物が出てくるのだろうか,と思うとうんざりもする。
とにかく,富の再分配をしなければならない。貧困を根本から無くさないといけない。投資(いや投機)やギャンブルに使う資金はすべて還元し,人類全体の幸福につながる仕事が評価されるような仕組みがほしい。しかし,インターネットによって別次元の世界にリアルの世界の資源がすべて吸い込まれてしまっているような危機感を覚える。リアルな世界に資源を還元できる方法を考えないと,地球温暖化とともに人類の文明も消え去ってしまうのではないかという危機感を覚える。エッセンシャルワーカーが誇りを持って仕事ができて,金銭的にも報われる社会のあり方を,考えてみたい。